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二人の翻訳家による本です。
『本当の翻訳の話をしよう』
小説家であり、翻訳家でもある村上春樹と、東京大学名誉教授であり翻訳家でもある柴田元幸による翻訳についての本。
雑誌『MONKEY』に掲載された小説や、翻訳に関しての対話7本と、柴田による独演会1本からなっている。
2019年5月9日にスイッチ・パブリングより発売された。
翻訳とは
本書は、二人の翻訳家による対談をまとめたものです。
二人とも、今までにたくさんの本を訳している一流の翻訳家です。
ここ何年か、翻訳本を読む機会が増えました。
外国の有名な小説や、ビジネス本などたくさんの本が日本語へと訳されて出版されています。
翻訳はとても難しい作業です。
『本当の翻訳の話をしよう』を読むと、そのことが改めて理解できます。
ある言語で書かれた文章を、別の言語に移し変える作業。
これは正解があるようで、決して一つの正解が存在しない作業です。
むしろ、無限の可能性を秘めている作業であるとも言えます。
言語にはそれぞれ特徴があります。
そして、言語ごとに流れのようなものが存在しています。
同じことを表現しようとしても、表現の仕方が異なることがあるのです。
翻訳家はその二つの文化の、言語の間に入り、両者の言いたいことを仲介するような役割を果たさなければなりません。
同じ文章を訳しても
本書の中には、村上春樹と柴田元幸という二人の翻訳家が、同じ英語の文章を日本語に訳したものが載っています。
これを見るだけでも、いかに人によって訳した後の文章が異なっているのかがわかります。
大きな流れは同じかもしれませんが、細かい表現や、文章の長さまで、それこそ全く別の文章となっています。
元となる文章は当然一つしかありません。
作者の伝えようとしているメッセージもそこに全て含まれているはずです。
翻訳家はそのメッセージを可能な限りこぼすことなく、別の言語圏の人に伝えるという、本当に難しい作業をこなさなければならないのです。
そこには正確に訳すことのできる高い外国語能力だけでなく、母国語で表現す流ことのできる能力が必要になります。
外国語でインプットされたものを、自分をいうフィルターを通して再びアウトプットするという高度な能力が求められます。
訳者によって
今まで、翻訳者が誰かということはあまり気にしたことはありませんでした。(村上春樹は例外ですが・・・)
しかし、この本読むといかに翻訳者によって訳された本が異なってくるのかということが分かります。
原文は一つしかないとしても、翻訳版は翻訳者次第なのです。
中にはたくさんの人によって訳されている本もあります。
古くから残っている名著と呼ばれる本は特にそうです。
たくさんの人が読み、研究し、翻訳されているのです。
正直いうと、その全てを読み、比較するというほどの時間的な余裕はありません・・・。(時間があれば好きな本だけでもやってみたい・・・)
この本の中には、たくさんの翻訳書が紹介されています。
読んでみたい本もたくさんありました。
そして、未だ訳されていない面白い本が山のようにあることも言及されています。
そんな本が世界にはたくさんあるのです。
そう考えると、いかに英語が大切かということが改めて理解できます。
世界中で一番多く書物に使われている言語はおそらく英語です。
英語で本を読むことができれば、本当にたくさんの本を読むことができます。
しかし、英語ができないばかりに翻訳を待っていると下手したら数年待つこととなってしまうでしょう。
もしかすると、誰も訳していなければずっと読むことができないかもしれないのです。
翻訳は面白い
この本を読むと、翻訳は難しい仕事でありながらも面白いものだということが伝わってきます。
この二人は、本当に翻訳という仕事を愛していて、そこからたくさんの喜びを見出しているのだと思います。
世の中に本はたくさんあり、翻訳されているものも増えています。
しかし、世の中にはまだまだ面白い本がたくさんあるのだろうと思います。
翻訳はその本たちの魅力を損なうこともできれば、増すこともできます。
きっと、この二人はこれからもたくさんの翻訳書を出すのだろうと思います。
機会があれば一つでも多く手にとって、読んでみたいものです。