感想・解説『1984年:ジョージ・オーウェル』描かれた未来の管理社会

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1940年代のイギリスの小説です。

世界傑作文学100選にも選ばれています。

『1984年』

イギリスの小説家ジョージ・オーウェルによる長編小説。

原題は『Nineteen Eighty-Four

1949年に出版され、日本でもいくつかの翻訳版が刊行されている。

世界的に評価の高い小説で、特に欧米での評価が高い。

世界中で65以上の言語に訳され、出版されている。

現代に至るまで、思想、文学、音楽など様々な分野において影響を与え続けている。

映画『時計仕掛けのオレンジ』や、日本の伊藤計劃による『虐殺器官』や村上春樹の『1Q84』なども影響を受けている作品。

ユートピアと逆の世界を描く『ディストピア』と呼ばれる類の作品。

STORY

1950年代の核戦争を経た1984年。

世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国によって統治されていた。

舞台となっているオセアニアではあらゆる市民生活に統制が加えられており、『ビッグ・ブラザー』と呼ばれる党首によって全ての行動が監視されている体制となっていた。

オセアニアに属するロンドンに住むウィンストン・スミスは、真理省の党員として歴史の改竄を仕事として暮らしていた。

かつてより、完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていたウィンストン・スミスはジュリアと名乗る美女と出会う。

二人は体制の監視をかいくぐって出会うことを重ねるが、ある人物からの密告から関係がバレてしまった二人は体制側の思想警察に捕らえられてしまう。

捕まった二人は、体制側からの尋問と拷問を受けることとなり・・・

ディストピアSF

小説『1984年』。いろんなところで耳にすることの多い小説でした。

それだけたくさんの後世の作品たちに影響を与える作品だということだと思います。

なぜ、この作品がこれほどまでにたくさんの作品に影響を与えうるものとなっているのでしょうか。

『1984年』はいわゆる『ディストピア』を描いている作品です。

理想的な世界を描く『ユートピア』とは逆のことを意味する言葉です。

ビッグ・ブラザーという党によって支配されている未来の世界。

『テレスクリーン』と呼ばれる双方向テレビや、街中のいたるところに仕掛けられているマイクによって行動の全てが党によって管理されています。

主人公となるウィンストン・スミスは体制側に常に疑問を持ち続けてきた人物です。

しかし、彼は歴史を改竄するという体制側に都合の悪い過去を消し去り、都合の良い歴史のみを残すという仕事をしています。

ウィンストン・スミスは、ジュリアという女性との出会いを経ながら、体制側への疑問を強めていき、最終的には捕らえられてしまいます・・・

管理社会の恐ろしさ

テクノロジーの発展によって、人は得たものもあれば、失ったものもあるといいます。

『1984年』で描かれている未来は、体制側に完全に管理されている社会です。

行動のほぼ全てが管理され、体制側の都合の良いような情報だけが流されている。人々はどうすることもできずに受け入れざるを得ないような。

そんな世界です。

色々なことが言えるとは思いますが、個人的にはこんなに恐ろしい社会はないな・・・と思いました。

まず、行動が抑制されていて、思想的な自由もありません。

体制側に逆らわずにいれば、無難に生きることはできるが、もし逆らえば罰が加えられる。

人々は次第に疑問を持つこともなくなり、体制側を礼賛するようになっていく。

これは本当に恐ろしいなと思います。

体制に従えば良いのかもしれませんが、体制側が絶対的に正しいという保証はどこにもありません。

体制側が本質的に大きく間違っていた場合、人々はあまりにも無力です。

思考停止してしまっている状態ではどうすることもできないでしょう。

この小説で描かれている未来は、決して今の現代と大き離れてはいないとも思います。

『1984年』の世界のように徹底的に管理されていることはありませんが、現代の僕らもマスコミの言うことはほぼ正しいと信じてしまっている部分もあります。

位置情報付きのスマートフォンを持っていれば、どこをどう行動しているかもわかる人には分かってしまうでしょう。

管理されているという意識なく、僕たちは管理されているのかもしれないのです。

このような小説を1940年代に書いていたのだから、本当に驚きです。

そして著者のジョージ・オーウェルは1984年はこんな未来になるとも心のどこかで予言していたのかもしれません。

何れにせよ、世界的に傑作と評価されるに値する力のある小説であることは間違いありません。

死ぬまでに一度は読む価値のある小説だと思います。

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