
知っている人も結構いるはずの名作漫画です。
『ピンポン』
日本の漫画家松本大洋による漫画。
1996年から1997年にかけて『週間ビッグコミックスピリッツ』にて連載された。
神奈川県の藤沢市を舞台とし、卓球に打ち込む高校生の姿を描く。
宮藤官九郎監督で映画化もしており、窪塚洋介、ARATA、中村獅童などが出演。
また、2014年にテレビアニメ化もしている。
STORY
幼馴染の星野裕(ペコ)と月本誠(スマイル)は片瀬高校の卓球部に所属する高校1年生。
小さい頃から一緒に卓球を続けてきた二人は、自分たちの部活にどこか物足りなさを感じていた。
ある日、辻堂学園という学校に、中国のエリートチームから留学生が来るという噂を耳にする。
ペコは部活をサボり、留学生の孔文革(コン・ウェンガ)(チャイナ)に挑むためにスマイルを連れて辻堂学園に向かう。
試合を挑むペコだったが、圧倒的な強さに完敗。
その一方で、スマイルは顧問である小泉から才能を見出され、特訓を受ける。
そして、全国トップクラスの実力を誇る王者、海王学園。
高校最強の風間竜一(ドラゴン)や、ペコとスマイルの幼馴染である佐久間学(アクマ)が所属している。
ドラゴンも小泉と同様にスマイルの才能を見出し、一目おいている様子。
それぞれ卓球に打ち込む5人の高校生。
ペコ、スマイル、チャイナ、ドラゴン、アクマの5人が参加するインターハイ予選が幕を開ける・・・。
才能と孤独と幸福
松本大洋作の漫画『ピンポン』。
最初に読んだのは結構前で、その時から大好きな漫画です。
スポーツ漫画として純粋に面白いし、色々と考えさせられることも多い。
物語の本質はスマイルとペコという二人が色々経て和解するというような話。
『対極な陰と陽が和解する』という物語。
物語の軸としてはSLUM DUNKやNARUTOに似ているかもしれません。
『ピンポン』に出てくるキャラクターは、それぞれ本当に個性的で魅力的です。
誰しもが誰かしらに感情移入することのできるような漫画になっていると思います。
『才能』という不明瞭な概念が極めて重要な卓球というスポーツにおいて、中心となるのは5人の卓球選手。
ペコは、卓球の才能はピカイチ。そして、卓球そのものを楽しむことのできるとても幸福な選手。
スマイルは、才能を見出されながらも勝負というものにあまり意味を見出せずにいる。
ドラゴンは、高校最強となれるほどの才能はあるのだが、それでもペコには及ばない。勝つことを宿命のように感じていて、それゆえの強さを持っている。
ドラゴンはとても孤独な選手だ。海王学園という名門のエースでありながらもどこかで自分の限界を感じてもいる。
チャイナは卓球王国の中国からやってきた留学生。実力はありながらも、大きな挫折を味わい、日本という国にやってきている。
そこでチャイナも自分の才能に限界を感じ、次の道を見出す。卓球を見限ることによって人生のスタートラインに立つ。
アクマは、5人の中では一番才能に恵まれていない選手だ。
それでも、血の滲むような努力をし、凡人としてたどり着ける限界までは努力する。
しかし、才能と努力の隔たりを超えることはできない。
彼もチャイナと同じように自分の才能を見限ることによって、次へと進む。
才能を見限るということ
自分の才能を見限るということは簡単なことではない。
自分自身の可能性を閉ざすことを誰しもが嫌悪する。
しかし、そうすることで先へと進めることもある。
『ピンポン』におけるチャイナやアクマはそうすることで人生を先へと進める。
競争の世界から降りることでしか見えない景色があるのだろう。
才能に恵まれているペコは、自分の才能で登れる所まで登っていく。
彼は一握りの選ばれた人間だ。現実にも彼のような人はいる。
しかし、誰しもがそうなれるわけではない。
ある意味で一番不幸なのはドラゴンかもしれない。
自分より才能ある人の存在を自覚しながらも、競争の世界であがいている。
最終話でも世界選手権のメンバーから外されたことが語られる。
より優れた人の存在をしっかりと自覚しながらも競争からは降りていないのだ。
スマイル
個人的に一番好きなキャラクターがスマイルだ。
スマイルは才能ある『持っている人』でありながらも、競争の世界にあまり価値を見出していない。
アクマやドラゴンから嫉妬されながらも、決して競争そのものには価値を見出していない。
彼は、ただただ自分自身を救ってくれたヒーローを待ち続けている。
かつていじめられていた自分を救ってくれた、卓球の世界へと導いてくれたヒーローをただ待ち続けているのだ。
最後のペコとスマイルとの決勝戦は本当に感動的だ。
小さい頃のように、純粋に卓球を楽しんでいる二人の様子は本当に美しいと思う。
語るべきことが
語りたいことがたくさんある作品だ。
映画も見たけど、これも面白い。
窪塚洋介や、中村獅童などキャステングもハマり役ばかりで、原作の魅力を損なうことのない映画だ。
これからも、定期的に読み返したくなる漫画だと思う。
時間を経て読んでみれば、また違う印象を持つこともあるかもしれない。