感想・解説?『孤独な散歩者の夢想:ルソー』晩年の哲学者の夢想

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手にとって読んでみたものの・・・

『孤独な散歩者の夢想』

1700年代のフランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーの著書。

1776年から1778年にかけて執筆された。

自分自身を深く見つめることに晩年の仕事を見出したルソーが死の直前まで書いていたもの。

その後の文学に自然と自我の問題を提起し、影響を与えたと言われている。

今回読んだのは、新潮文庫より刊行されている青柳瑞穂役によるもの。

虚構と真実

本書は第一から第十までの十つの散歩という章からなっている。

それぞれ、晩年のルソーが自分と向き合い、外の自然と向き合う様子が描かれている。

文庫版は200ページほどであるが、中身は非常に濃い。

作者が考えていることの全てを理解することはできていなと思うけれど、印象に残るような文章はたくさんあった。

第四の散歩の中にこんな文章がある

『自分自身の利益のために嘘をつくことは詐欺である。

他人の利益のために嘘をつくことは欺瞞である。

害せんがために嘘をつくことは誹謗である。

自分にも他人にも損にも特にもならずにつく嘘は嘘ではない。これは虚構だ。

寓話やお伽話というような虚構の物語の目的は、感覚的なこころよい形式で真実を包むこむことのみにある。』

『嘘』と『真実』に関する話だ。

著者は、あらゆる物語の形式をとっているものは、虚構でありながら、その虚構は真実を包み込むためにあるという。

なるほどな。と思ってしまった。

嘘は決して良いことではないかもしれない。誰かの利益になるような嘘や誰かを傷つけるような嘘はあまり良いこととはされていない。

しかし、嘘は物語という形式をとることで真実を示すことができる。

文学や、映画、テレビやドラマ、漫画など。

虚構の物語は真実を語りうる存在となる。

第六の散歩

第六の散歩にはこんな一文がある。

『もし僕が自由で、人に知られずに孤立していたなら、おそらく善いことしかしなかったろうと思う。

優秀な人間を作るのは力と自由なのだ。

弱さと束縛はこれまで悪人しか造らなかったのである。』

これも本当に納得できるような一文だ。

悪人は決して元々悪人だったとは言い難い。

その人の持っている弱さや、自分以外の誰かによる束縛が人を悪人へと変えてしまう。

本書から200年以上が経過した今の社会においても通じている心理だと思う。

何か悪いことをしてしまう人は概して力を持たずに、不自由な人だ。

力を持っていて、自由を持っている人間であればきっとある程度の幸福を享受することができているのだろう。

死ぬ直前に

この本は、哲学者のジャン=ジャック・ルソーが死ぬ直前に書かれた本だ。

自分自身が死ぬ直前にどんなことを思考するか想像することができるだろうか。

少なくとも僕ははっきりと想像することはできない。

ルソーは哲学者という少し特殊な存在であったかもしれない。

しかし、この本を読むと死の直前を生きている人間がどのようなことを考えているのかを完全にとは言わないまでも知ることができる。

著者は、晩年本当に孤独だったのだろう。

この本にはタイトルにあるように孤独に関する記述がとても多い。

しかし、必ずしも否定的なニュアンスで語られてはいない。

むしろ、孤独を楽しみ、幸福だと感じているような様子だ。

ルソーのことは知っていたけど、詳しくはあまり知らなかった。

著作を読んだこともなければ、どんな人物だったかを知るような機会もなかった。

今回初めて本を手に取り、読んでみた。

感想は、本当に難しい・・・。

しかし、すべてを理解できないかというとそんなことはない。

ちょっとした一文になるほどなと思わせてくれるようなものがあったり、現在にしっかりと通じているような真理を含んでいるような記述も多い。

彼が、世界的に、歴史的に名を知られている理由がなんとなくわかるような気がした。

機会があれば、他の著作も読んでみたいです。

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