
面白そうだったのでレンタルして鑑賞。
これはあの人の小説にそっくりじゃないか・・・
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
2018年のアメリカ映画
監督はデヴィット・ロバート・ミッチェル
主演はアンドリュー・ガーフィールド
日本公開は2018年10月13日
あらすじ
サムはロサンゼルスに住む33歳の青年。
夢ある街で大物になることを志していたが、気がつけば仕事もなく家賃も滞納しているような状態。
そんなある日、隣の家に住む美女サラに一目惚れする。
サムはサラとのデートの約束を取り付けるのだが、突然サラは姿を消してしまう。
サムはサラ失踪の謎を突き止めるべく、手がかりを探し求めることに。
『犬殺し』や『フクロウ人間のキス』などの様々な都市伝説が街には流布している中、サムは陰謀の真相へと迫っていく・・・
不思議な雰囲気の映画
存在は知っていて、気になっていた映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』。
見終えた感想は、これって村上春樹の小説にそっくりじゃないか・・・
少し前に『ねじまき鳥クロニクル』を読んだばかりだったこともあり、似てるな・・・とずっと思いながら見てました。
この映画にはたくさんの謎が登場する。
そして、個性豊かなたくさんの人物が登場しては退場することを繰り返す。
『女性の失踪』から始まる物語っていうのも村上春樹小説にそっくりだ。
この映画では唐突に謎が登場しては、完全には解決することなく去っていく。
家に現れた『フクロウ人間』はなんなのか。突然現れた『ホームレスの王』とは何者なのか。
『音楽界を支配する男』はどこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。
曲に隠されたメッセージや、最後に出てくる大富豪たち。
目的も、意味も曖昧なままに話は進んでいく。
シルバーレイクとは
シルバーレイクはロサンゼルスにある地名の一つだ。
『LA LA LAND』にも登場したグリフィス天文台も映画には登場する。
しかし、そこで起きることは対称的だ。
『LA LA LAND』では恋人と結ばれ、天に昇っていくシーンが描かれているのに対し、この映画では地下へと潜っていくこととなる。
この映画は悪夢版の『LA LA LAND』だという表現にもすごく納得できる。
夢を見てロサンゼルスにやってきて、夢が叶わずに散ったたくさんの人たちの話であるのかもしれない。
豊かな映画
この映画には様々なカルチャーが含まれているという。
日本発である、任天堂のマリオやゼルダの伝説も登場する。
全てを知っているわけではないが、過去の名作映画を引用するような演出もふんだんに含まれている。
登場人物も本当に豊かだ。
特に気になったのが、『音楽界を支配する男』だ。
彼は世の中の流行となっている曲は全て自分の作ったものだというようなことを言う。
サムは自分の憧れた音楽が、彼のような人に作られ、操られていたのだということを言われ、激昂する。
こんな人物は少なくとも僕は見たことがないし、ここでのやり取りは本当に面白い。
とても好きな映画
この映画を見終えて、振り返ってみて、色々と分からないことが残りつつも僕はこの映画がとても好きだ。
謎には答えが与えられていることが不可欠かというとそうではない。
この映画では謎を謎のまま残したまま、しっかりとメッセージを伝えることができていると思う。
主人公のサムは、未だに自分自身の夢と現実とをうまく捉えることができずにいる。
それは彼自身の問題なのかもしれないし、街自体の問題なのかもしれない。
彼は手に入らない可能性を追い求めて彷徨い、最後には絶対に自分には手に入らないのだということを知る。
しかし、最後に彼は自分に手にすることのできるものをしっかりと手にする。
そして、映画は終わっていく。
いろんな解釈のできる映画かもしれないが、この映画のラストに僕は希望を感じた。
一人の男が、ありのままの自分を受け入れていくという自己受容の話なのだ。
サムは自分の可能性を『閉ざす』こととなる。そうすることで人生を前進していくことができるのだと思う。
この映画のセリフも本当にセンスのあるものが多い。そして、映画としては間違いなく面白い。
世界は僕たちの知らない何かに支配されているのかもしれないという可能性はそれ自体、本当に興味深いし、もしかしたらそうなのかもしれないと思えてくる。
現実に世界は僕たちの知らない情報や陰謀が存在しているのだろう。
この映画を見ればきっと、そんな世界のことを想像することができるのだと思う。