
小説『ハツカネズミと人間』
大恐慌時代のアメリカのお話です。
『ハツカネズミと人間』
1937年に出版されたアメリカの小説家ジョン・スタインベックによる小説
原題は『Of Mice and Men』
スタインベック自身の季節労働者としての経験がベースとなっている。
ジョン・スタインベックはカリフォルニア出身の小説家
代表作は『怒りの葡萄』で1940年には当作でピューリッツァー賞を受賞。
『怒りの葡萄』は発売直後から売れ続け、1400万冊以上が販売されている。
また、スタインベックは1962年にノーベル文学賞を受賞。
今回読んだ『ハツカネズミと人間』は、新潮文庫より刊行されている大浦暁生訳のもの
あらすじ
1930年代、大恐慌時代のアメリカ、カリフォルニア。
季節労働者として働くジョージとレニーには小さな夢があった。
いつか小さな家と農場を持ち、その土地での一番いいものを食い、ウサギを飼って静かに暮らす。
そんな夢を描きながら、カリフォルニアの農場を転々とする二人。
二人は常に行動を共にしているが、大男レニーがいつも問題を起こし、なかなか一つのところの止まることができずにいる。
そんな二人がたどり着いたある農場で、出会った様々な人たちと生活を共にすることとなる。
そして、二人の夢が少し近づいてきたかと思ったところで、ある事件が起きてしまう・・・
恐慌時代のアメリカとは
1930年代、大恐慌時代のアメリカ・・・。
当時のことをどれだけ僕らは知ることができるだろう。
おそらく、本質的に理解することはとても難しい。
それでも、その雰囲気を感じ取ることはできる。
そして、それは小説や映画の持つ重要な役割の一つだ。
優れた物語は、当時の状況を伝える貴重な情報となり、世代を超えていく力を持っている。
『ハツカネズミと人間』は1930年代のカリフォルニアを舞台とした小説だ。
著者のスタインベックの体験をベースとされている。
農場を転々とするジョージとレニーの話だ。
この小説には当時の時代状況がふんだんに含まれている。
季節労働者と農場との関係性。
アメリカにおけるいわゆる搾取される側の人間の立場の弱さ。
そして、アメリカという銃社会を生きる人たちの姿。
スタインベックは小説家としては珍しく、『泥臭い』話を書く。
代表作『怒りの葡萄』も故郷を追われた家族の話だ。
悲劇の結末・・・
『ハツカネズミと人間』の最後はある悲劇的な結末となっている。
詳しくは是非読んでいただきたいのだが、決して希望を残すような最後とはなっていない。
しかし、この終わり方こそが当時の恐慌時代のアメリカを象徴しているとも思える。
季節労働者の立場は決して強くはない。
ある期間だけ農場に雇われ、与えられた仕事を終え、働いた分だけの給料をもらって去っていく。
安定とは程遠い存在だ。だからこそ、ジョージとレニーは夢を抱く。
きっと、作者のスタインベックも同様の経験を持ち、極めて不安定な感情を抱いていたのだろうと思う。
スタインベックは『人間には負の感情がある』ということを誰よりも強く理解している小説家だ。
そういう人だからこそかける小説を発表し、世界的に評価されてもいる。
そして、これからも世代を超えていく貴重な情報として彼の小説は読み継がれていくのだろう。
なかなか手に取ることのない海外文学かもしれませんが、『ハツカネズミと人間』は150ページほどの短い小説です。
是非、手にとって読んでみて下さい。