
ぼくのりりっくのぼうよみとしての最後のアルバム『没落』と、ベストアルバム『人間』
引退してしまったのは残念・・・
ぼくのりりっくのぼうよみ
2012年頃よりニコニコ動画に動画を投稿し、2015年にアルバム『hollow world』にてメジャーデビュー。
当時は17歳の現役高校3年生だった。
2017年1月にセカンドアルバム『Noah’s Ark』を、11月にはサードアルバム『Fruits Decaying』発売。
『Be Noble』『SKY’s the limit』『つきとさなぎ』など映画、ドラマ、CMでのタイアップ曲も多数。
2018年9月、2019年1月をもってアーティスト活動を引退することを発表。
12月12日に発売されたのが4枚目のアルバム『没落』と、それまでの曲を収録したベストアルバム『人間』。
1月29日のラストライブ『葬式』にて活動の全てを引退。
『つきとさなぎ』
ぼくのりりっくのぼうよみのことを知ったのはいつだっただろうか。
はっきりとは思い出せないが、『3月のライオン』と言う映画の予告を劇場で見たときだったような気がする。
主題歌として使われていた『Be Noble』という曲がやけに耳に残ったのを覚えている。
そして、ひらがなで画面に映っていた『ぼくのりりっくのぼうよみ』という名前も。
それから僕は彼の曲をよく聞くようになった。
まだ20歳前後の人が、こんなにも魅力的な曲を作れるものかと驚いた。
特に好きだったのが『つきとさなぎ』という曲だ。
これはドラマ版『サイタマノラッパー』のエンディングとなっていた曲だ。
『夢を諦めたはずなのに、諦められていない。
残酷な可能性が僕を離さないから。
知らずにいられたら幸せだっただろうか?
知らないふりをしても心は気づいている。
誤解と戸惑いがつきまといながらも先に進めばいい。
空を見れば綺麗な青い月』
曲はこんな歌詞だ。
この曲と歌詞は、個人的にすごく好きだ。
人からはあまり理解されない何かを狂信的に好きになってしまった時。
叶わないとわかっていても、決して嫌いになることのできない何か。
カッコ悪かろうとも、その『好き』という感情を肯定してくれるような。
そんな曲だ。
『サイタマノラッパー』という作品にもとても合っていた。
ネットというフラットな世界
ぼくのりりっくのぼうよみはもともと動画投稿サイトに動画を投稿していたところから始まっている。
そして目にとまり、20歳になる前にメジャーデビューしている。
彼が21歳という若さで引退することを決めたのはどういう経緯があったのだろう。
その全てを知ることはできない。
彼は極めて『現代的』もしくは『未来的』な売れ方をした特異なアーティストだったと思う。
ネットという誰しもが参入できる世界において、自分の存在を示すところから始まっている。
ネットという場は自由であり、フラットな場だ。
淘汰は自然に行われ、経験も人脈も関係なく能力のある人間だけが自然に残っていく。
ぼくのりりっくのぼうよみはネットという場で高い『個としての能力』を示すことで世に出てきた。
おそらく、彼は世に出ることによって著しく『自由を損なわれてしまった』のではないだろうか。
若くして世に出てしまった彼は大衆に今までになかった感情を呼び起こした。
嫉妬という言葉が一番近いような気もするが、きっとその二文字では表すことのできない感情だ。
『僕はもういない』
ラストアルバムの『没落』の中に『僕はもういない』という曲がある。
この曲もまた才能溢れる非常にいい曲だ。
しかし、この曲には彼の苦悩が詰め込まれていると思う。
この曲を聴くと、なんとなく彼が引退するに至った理由が少しだけわかるような気がする。
僕が何を想おうとも、アーティストとしてのぼくのりりっくのぼうよみはいなくなってしまった。
しかし、彼はまた何かしらの形で世に出てくるような気がする。
何よりまだ若く、彼の見てきた世界をその年齢で見ているような人はとても少ない。
彼が成長し、成熟した時。
そして、世の中も彼のことを受け入れることができるほど成熟した時がいつかくるような気がする。
そうなった時、また彼のことを見てみたい。