
兄に勧められて読んだ漫画『この世界の片隅に』についてです。
こんな漫画があったなんて・・・
『この世界の片隅に』
こうの史代によって書かれた日本の漫画作品
『漫画アクション』にて2007年から2009年まで連載された。
単行本は上・中・下の形式と、前編・後編の形式で発売されている。
2011年に一度ドラマ化。2018年にも日曜劇場でドラマ化。
また、片渕須直監督による映画版が2016年に公開。
2019年12月20日にはさらに追加カットを付け足した『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開予定。
あらすじ
物語の舞台は戦時中の広島と呉。
絵を描くことが好きな浦野すずは、広島の江波で生まれ育った。
実家は海苔梳きの仕事を営んでいる。
ある日、祖母の家で海苔梳きの仕事を手伝っているすずのところに縁談の話が持ちかけられる。
相手は少し離れた呉に住む北條周作という青年。
相手はすずのことを知っているようだが、すずは周作とどこで会ったのかを思い出すことができない。
周作と結婚することとなったすずは、呉へと嫁ぐこととなる。
呉で新しい生活を始めるすず。
決して豊かとは言えない戦時中の日本を懸命に生きるすずと周作とその家族。
遊楽街で出会うリンさんや、周作の姉である径子さんとその娘の晴美さん。
水兵となった幼馴染の水原さんとも再会を果たしたが、戦争は次第に激しさを増していく。
戦火はすずさんとその家族にも容赦なく襲いかかる。
戦争と市民
『この世界の片隅に』は戦時中の広島を描いた漫画だ。
広島と聞くと、日本人ならば誰しもが原爆のことを思い描くだろう。
広島という地は、ある意味では戦争と最も結びつきやすい土地であるとも言える。
作中には、話の始まりに日付が書かれている。
1945年の8月6日。原爆が広島に投下された日だ。
作品はその日付に次第に近づいていくように描かれる。
僕たちはそのことを知りながら読んでいかなければならない。
この作品は戦争という『大きな物語』を生きる市民であるすずたちの『小さな物語』だの話だ。
読み手にリテラシーが求められる
この漫画は、たくさんの情報が詰め込まれている。
そして、その全てに説明があるわけではない。
読み手のリテラシー次第で、どれだけのものを受け取ることができるか違ってくる作品であるのだ。
言葉による説明は決して多くはない。
少しの絵の違いや、絵の変化などでたくさんのことを語っている。
説明なしに行間だけで済ますような表現もたくさんある。
そこは読み手が能動的に情報を受け取るべく考えなければならない。
何度読んでも、新しいことに気づかされる作品だ。
確かに読んでいるシーンのはずなのにも関わらず、もう一度読むとまた別の意味があるのではないかと思えてくる。
そこには漫画の与えてくれる幸福感がある。
戦争に屈しない
基本的には明るく、くすっと笑ってしまうところの多い漫画だ。
それでも、戦争というものの大変さや悲惨さはしっかりと描いている。
途中、すずは自分の右手と大切な人を失う。
手を失うことによってすずの好きだった『絵を描く』ということも失われてしまう。
それでもすずと周作は懸命に戦争を乗り越え、最後は笑顔になっている。
だからこの作品は凄い。
戦争からは決して目をそらしてはいない。
戦争の大変さを伝えると同時に、人の強さをしっかりと描いている。
そして、それは今を生きる僕たちにもしっかりとつながっている。
映画『この世界の片隅に』
『この世界の片隅に』はアニメーション映画として2016年に公開されている。
この映画も何度か見たが本当に凄い。
感想はまた別で描きたいが、全ての日本人が見るに値する映画になっていると思う。
本当に義務教育の一環として取り入れてもいいくらい・・・笑
12月には追加カットが付け足された『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開予定という。
これ見ない訳にはいかない・・・
本当に楽しみ。