感想『ファントム・スレッド』崩れた歯車の先に気づくもの

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

映画『ファントム・スレッド』

アカデミー賞にもノミネートされていたので気になって見てきました。(結構前ですが)

『ファントム・スレッド』とは

2017年のアメリカ映画

監督はポール・トーマス・アンダーソン

主演はダニエル・デイ=ルイス

ダニエル・デイ=ルイスは今作で俳優業を引退した。

米国アカデミー賞では作品賞始め6部門にノミネート

あらすじ

舞台は1950年代のイギリス・ロンドン。

レイノルズ・ウッドコックは姉のシリルとともにドレスの仕立て屋をしている。

モデルとなる女性は屋敷に住まい、レイノルズとともにドレスを作り上げていく。

その中でレイノルズに好意を持つ女性も多いが、レイノルズはいまだ独身でいるという。

とある喫茶店でウッドコックは一人の女性と出会う。

名前は『アルマ』

始めはウエイターと客という関係であったが、次第に互いに好意を抱き始める。

そして、アルマにドレスを作ることとなる。

屋敷に住まい、いずれはパートナーとなることを望むアルマであるが、次第にウッドコックの家族とその過去に疑問を持つこととなる。

モデルとしての役割を終えると、アルマはレイノルズの興味が失われていくことを感じ取る。

そして、ある計画を立てる。

美しい映画・・・

なんという美しい映画なのだろう・・・。

僕が日本に住んでいて、ヨーロッパに対して漠然とした憧れのようなものを持っていることを差っ引いてもこの映画は美しい。

主人公のレイノルズ・ウッドコックはドレスの仕立て屋という『美しさを作る』仕事をしている。

側から見ると異常だと思えるようなこだわりを持ち、仕事に臨んでいることが分かる。

そして、姉のシリル。

レイノルズは姉のことを全面的に信頼している。

二人はそれこそ狂気的にドレス作りと向き合っている。

ドレスをを作っている様子や、街の風景や食べている食事。

流れている音楽に至るまで、本当に美しい映画だ。

僕は1950年代のロンドンのことを知ることはできないけれど、素晴らし時代だったのだなと強く思った。

歯車は狂い始め・・・

『アルマ』という女性がレイノルズの前に現れる。

そして、アルマはレイノルズの歯車を狂わせ始める。

レイノルズは神経質で、ルーティンをとても大切にしている職人だ。

そして、しっかりと成功し、社会的な地位と富を得ている。

アルマはその完璧に見えるような輪の中に入っていく。

とても強引な手段を使い。

レイノルズは怒り、排除しようとする。

しかし、輪を乱されたことによってレイノルズは気がつく。

自分は今まで人としての喜びを知らずにきたのではないか。

そして、それを取り返すことはできないのではないかと。

最近見た映画『運び屋』にも同じような場面があった。

『時間だけは取り返すことができなかった。』

そんなセリフがあった。

誰もが理解していることでありながらも、人生の本質を突いていると思った。

時間は不可逆だ。

誰も取り返すことができずに失っていくだけのものだ。

だからこそ儚く、だからこそ美しい。

最後、レイノルズは弱り果てる。弱っている時にはアルマを求めるようになる。

『あなたは弱くいてくれればいい。そうすれば私が必要だから。』

そんなセリフがあった。

怖さもあったが、人と人との関係性はこういうものなのかもしれない。

弱さがあるからこそ、人は人を必要とする。

そしてそれができればもうその人は弱くはない。

強くある人の一歩目を踏み出している。

とにかく、いい映画でした。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*