感想『ハナレイ・ベイ』映画化することの難しさ

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少し前ですが、映画館で見てきました。

とにかく海が綺麗でした・・・

映画『ハナレイ・ベイ』

2018年10月に日本で公開された

原作は村上春樹の『東京奇譚集』に収録された短編小説

監督は松永大司

主演は吉田羊

村上虹郎、佐野玲於らが共演

村上春樹作品の映画化は2010年の『ノルウェイの森』以来8年ぶり

日本とハワイで撮影が行われた

『ハナレイ・ベイ』あらすじ

サチの息子はハナレイ湾でサーフィンをしている最中にサメに足を食いちぎられて死んだ。

知らせを受けたサチは、火葬を済まし1週間ハナレイの街に滞在した。

それ以降サチは毎年命日にはハナレイを訪れ、3週間ほど滞在することとなった。

毎年ハナレイを訪れて10年が経過した。

ハナレイを訪れたサチは二人の日本人サーファーと出会う。

二人は日本の大学生で、旅行でサーフィンをしに来ているという。

ある日、二人のうち一人がこう言う。

「片足の日本人サーファーを見た」と。

サチはそれが自分の息子のことであると悟り、息子の姿を追い求め彷徨う。

二人には見えて自分には見えないはずがないだろうと。

しかし、サチの前に片足のサーファーは姿を現さない。

サチはハナレイを離れ日本へ戻ることとなる。

映画化することの難しさ

村上春樹作品を映画化することは難しい。

そのことに対し異論を持つ人はおそらく少ない。

村上春樹は今や日本だけでなく世界的に認知され、認められている小説家だ。

彼の小説は言語を越え、文化を越えて読まれ続けている。

日本人の現役の小説家の中で最も世界的に認められていることは間違いない。

しかし、作品は数あれどその小説が別の媒体で再構築されている機会は決して多くはない。

松山ケンイチ主演で映画化された『ノルウェイの森』は有名だが、それでも8年前のことになる。

きっと映画化することを試みた人はたくさんいる。

しかし、映画化するまで至っているものは少ない。

村上春樹の小説は、小説でしかできないことをやっている。

小説でしか与えることのできない快楽を与えている。

それはきっと小説以外の媒体では再現することができないものだ。

だからこそ彼は一流の小説家なのだろう。

『ハナレイ・ベイ』

『ハナレイ・ベイ』は一人の女性が息子の死と向き合う小説だ。

主人公のサチの息子はサーフィンの最中にサメに襲われて命を落とす。

場所は日本から遠く離れたハナレイ湾。

サチは毎年そこを訪れるようになる。

サチは息子のことがあまり好きではなかったという。

息子は嫌いだった別れた夫の面影を感じるからだ。

しかし、息子を失いサチは複雑な感情を自分の中に宿すこととなる。

それはきっと説明することの難しい感情だ。

そしてハナレイで出会った二人の日本人から聞いた話を頼りに息子の姿を探し求める。

この映画は決して大きな見せ場があるわけではない。

しかし、何も感じることのない映画かと言うと全くそんなことはない。

人の死と向き合うことは簡単ではない。

それが自分の息子となると尚更のことだろう。

息子は死んでしまい、もう取り返すことはできない。

その事実をサチはなかなか受け入れることができていない。

だからこそハナレイを毎年訪れている。

終盤に、サチがホテルの部屋で取り乱すシーンがある。

静かな雰囲気のこの映画において唯一登場人物が感情をむき出しにするシーンだ。

失った誰かを取り替えることはできない。

しかし、残された者は生きていかなければならない。

そんな感情は行き場をなくし、爆発する。

そして、サチは日本へと戻る。


村上春樹作品の映画化は難しい。

『ハナレイ・ベイ』はそれに挑戦している。

原作も含めぜひ一度見て見てください。



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