
かなり真面目な内容の本を読んでみました。
題名がおもしろうそうだったので、本屋で一目見て買ってしまいました。
『テクノロジーは貧困を救わない』
2016年にみすず書房より出版された。
著者は外山健太郎
訳者は松本裕
本書のテーマはタイトルにあるようにテクノロジーの発展は貧困を救うのかというもの。
単純に考えれば、その通りだと思うかもしれない。
しかし、世界はそう単純ではないのだと本書は言う。
テクノロジーと人間との関係を著者の経験を交えながら描き出していく。
テクノロジーは貧困を救うのか?
本書にはこのようなエピソードが書かれている。
とある発展途上国の学校の授業に最新のパソコンを導入したらどうなるのだろうかと。
最新のパソコンを導入することで、発展的な授業を行うことができ、結果として教育の水準は上がるのだろうかと。
結果はそうはならない。
最新のパソコンを教師たちが使いこなすことができず、結果として負担となってしまうという。
化学や技術の進歩は人類を豊かにしてきた。
それは誰にも否定することのできない事実だ。
しかし、発展途上の状態である国に最新のテクノロジーを持ち込んだからといってすぐに貧困がなくなるかと言うとそうではない。
最低限の衣食住の担保されていない状態の人たちにパソコンやスマートフォンが必要だろうか。
安定した水や電気が担保されていない人たちに、エアコンや冷蔵庫が必要だろうか。
必要な発展はその社会の発展状況によって異なる。
ある国で劇的な発展をもたらしたテクノロジーも他の国では必ずしもそうとは限らない。
内面的動機
本書ではテクノロジーそのものの発展よりも、内面的成長の重要性について述べている。
テクノロジーはそれを増幅する装置にすぎないという。
人の欲求には階層があり、心理学者のマズローは階層を5つの段階に分けている。
まず人は安全を求める。安全が確保されると、承認を求めるようになる。
そして、商人が得られることによって自己実現を求めることとなる。
この自己実現こそが最も高い次元にある欲求の段階だ。
しかし、さらに人を突き動かす欲求もあるという。
それは他者のための善行だ。
自己実現の先に人は利他的な行動へと向かうのだ。
テクノロジーよりも人間開発
テテクノロジーの発展には人間開発が不可欠だ。
それは内発的動機によってもたらされるのが理想的なのだという。
内発的な動機は、他者がどうこうできるものではない。
あくまでもひとりの人間の内側から湧き上がってきた感情と行動だ。
だからこそ、持続的であり、持続的であるがゆえに強い。
本質的に貧困を救うためには多くの人が内発的な動機をもとに行動することが不可欠だ。
そして、テクノロジーがそれを補完する。
その形こそが発展の理想的な流れなのだろう。
貧困をなくすことは簡単ではない。
先進国は途上国の貧困を糧として発展しているという側面もあるからだ。
だからと言って、貧困は放っておいていい問題ではないことは明らかだ。
この世に生を受けながらも、すぐに命を落とす人が少なからずいる。
そういう人たちのために私たちは何ができるのだろう。
きっと明確な正解は存在しない。
しかし、本書がその助けとなる考えを与えてくれることは間違いない。