
発売されたばかりの古市さんの新書読みました。
週刊新潮に連載されていたエッセイをまとめたもので、文章は全て雑誌連載時のままですが、それぞれの文章の後には後日談として一言添えられていたりもします。
内容紹介
炎上したいわけではない。でも、つい言いたくなる。
https://www.shinchosha.co.jp/book/610810/
みんなが当然のように信じている価値観や正論って、本当にただしいのだろうか、と。
いつの時代も結局見た目が9割だし、観光名所はインスタの写真に勝てないし、血がつながっているから家族を愛せるわけじゃない。
“目から鱗”の指摘から独自のライフハックまで、メディアや小説など多方面で活躍する著者が「誰の味方でもない」独自の視点を提示する。
社会学者 古市憲寿
僕も大学では社会学を勉強していました。
それまで知らなかったたくさんの社会学者存在を知りましたし、たくさんの人の文章を読みました。
その中でも個人的に特に印象に残った本が一つありました。
それは『絶望の国の幸福な若者たち』という本です。
この本は古市憲寿さんの著作で、日本の若者たちは未来に絶望しているがゆえに、現在を十分に楽しんでおり、幸福なのではないかということが書かれている本です。
授業で初めて読んだのですが、初めて読んだ時、シンプルにすごく面白いなと思いました。
上から目線での学者の分析ではなく、あくまで若者たちの視線に寄り添うような形で書かれていたこともありますし、一つの読み物としてとても面白かったです。
古市憲寿さんは30代前半の若い社会学者です。
『社会学者』という言葉、あまり耳にすることはないかもしれません。
社会学を研究している、いわゆる”研究者”なのですが、あんまり聞くことはないでしょう。
そんな中で、おそらく日本で一番名を知られている社会学者が古市さんではないでしょうか。
僕の好きな『ワイドナショー』など、テレビにも結構出演していて、独特の存在感を出している方です。
フラットでいることの難しさ
この方、どんな人なのかというと、すごーく才能に溢れた人です。
独特の感性や、視点の持っていて、少し変な一面も見せながらも、きっちり話すところはきっちりとした意見を述べることもできる方です。
そして、常に”フラットな”発言をする人だとも思います。
僕も大学で専攻していましたが、社会学はフラットな視線をいかに担保するかがとても重要な学問です。
研究の対象となる『社会』は実体のあるものではありません。
『社会』を研究の対象とするのは難しく、何より自分もその社会の構成員の一人です。
だからこそいかに俯瞰的な視線を持つことができるかということがとても重要となってくる学問でもあるのです。
主観を排除し、フラットな視線で世界を見ること。かつ上から目線にならないようにしなければならないのです。
『誰の味方でもありません』
本書はそのタイトルから分かるように、誰の味方もしないエッセイが掲載されています。
元々は週刊新潮という雑誌で連載されていたもので、一つの文章は短く、非常に読みやすいものです。
そして、きっと古市さんは楽しんで書いたのだろうなーということもなんとなく伝わってきます。
扱われているテーマは特に統一性はありません。
古市さんが気になったニュースや、思っていることを書き綴っているものです。
外国に行った時の話もあれば、気になった映画の話もあり、
人の未来のような大きな話もあれば、自分自身の小さな話もあったりして。
その全てがフラットに書かれ、少し独特の視線で語られています。
古市さんの発言はしばしば炎上することがあるのですが、きっとそれは良くも悪くも人に響く文章を書いているからなのかもしれません。
人の感情や琴線に触れるからこそ、それに反発する人も出てくる。
反発する人が出てくるからこそ共感し支持する人も出てくるのかもしれません。
おそらくこの方はこれからも活躍していくことだろうと思います。
彼のような存在は今の社会にとって凄く貴重な存在のように思えるからです。
正論の危うさ
現代では、”言いたいことを言う”ことが難しくなってきている部分があります。
そんな時、人は『正論』に逃げ、振りかざしてしまうことがあります。
本書の冒頭には『正論』を振りかざすことの怖さが書かれています。
『正論』は正しいがゆえに強く、自分は正しいことをしているのだという感覚を持ってしまいがちです。
その正しさゆえに、『正論』を言う時は気をつけなければならないのです。
僕も大学で社会学を専攻していました。
古市さんは学者としてもしっかりと認められ、存在感を持っている人でもあります。
そして、自由に生きている人でもあります。
そういう人にしか書けない文章がある気がします。
古市さんは『平成くん、さようなら』という作品で芥川賞にノミネートされていたりもしました。(惜しくも受賞はなりませんでしたが)
これも読めていないのですが、時間があれば是非読んでみたいなと思っています。