
今回は映画『半世界』
誰しもが自分の世界を生きている。
『半世界』とは?
2019年公開の日本映画
監督・脚本は阪本順治
主演は稲垣吾郎
他、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦が共演
題名の『半世界』は小石清の写真展の題名から取っている
第31回東京国際映画祭では、観客賞受賞作
どんなストーリー?
稲垣吾郎演じる絋は父親から受け継いだ炭作りの仕事をしている。
生まれ育った地元で、奥さんと子供と3人で暮らしている。
息子は思春期で、父親とは微妙な距離感。
夫婦仲も決して悪くは無いが、家のことは奥さんに任せっきりになっていた。
そこに幼馴染みの瑛介が帰ってくる。
何かあった様子の瑛介だが、決して多くは語ることはない。
もう1人の幼馴染の光彦からは、息子に興味がないことを見抜かれてるんだよ。という厳しい言葉をかけられる絋。
描いた通りの人生にはなっていないかもしれないが、3人は40歳になろうかとしていた。
家の片付けを終えた瑛介は、絋の炭釜の仕事を手伝い始める。
とても大変な仕事を1人でやっているのだと言うことを知る。
瑛介は幼馴染の2人には次第に心を開いていく。
そんな中、息子があまり良くない友達とつるんでいることを知るが…
それぞれの半世界
40歳という年齢。
諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる。
そんな年齢だ。
きっと誰しもが思い描いた人生があった。
そして、その一部は叶うかもしれないが、きっと叶わないこともたくさんある。
そんな不完全な人生を誰もが生きている。
稲垣吾郎演じる絋は、何も持っていない人ではない。
父から受け継いだ炭釜の仕事があり、結婚していて子供もいる。
生活は決して派手ではないかもしれないが、自分のできることを自分の世界でやっている。
そんな暮らしをしている。
しかし、どこかで満たされなさも感じている。
生まれ育った田舎の街で、父から受け継いだだけの仕事。
果たしてこのままでいいのかとも思っている。
ある時期ずっと一緒にいた幼馴染の2人。
2人も不完全な人生を生きている。
重なっていた人生は次第に離れ、それぞれの時間が流れ始める。
長谷川博己演じる瑛介は自衛隊で海外に派遣されていた。
瑛介は言う。
「お前らは世界を知らない」
大きな傷を負って帰ってきたのだということが分かる。
しかし、幼馴染の2人もそれぞれの世界で戦っている。
そこには決して優劣なんてない。
感動、そして最後は意外な結末…
とても感動できる映画だ。
人生は良いことばかりではないかもしれない。
しかし、決して悪いことばかりでもない。
トータルで生きることそのものを肯定できる。
そんな気持ちになる映画だ。
僕はまだギリギリ20代だけど、40歳を前にするとこんな気持ちになるのかということが、身に染みて分かったような気がした。
また歳を重ねてから見ると別の見え方をするのかもしれない。
個人的に好きなのが、息子をいじめている友達の中のボスとなっている奴が、弱さを見せるシーン。
立ち向かってきた息子に対し「俺も昔はそうだった」と言う。
息子は強くなることを決める。
そして、最後のシーンへと繋がっていく。
父親からもしっかりと受け継いだバトンを、また次の世代へと繋いでいく。
そんな未来を想像させる。
どんな年齢の人でも一見の価値ありです。