感想・解説『アラバマ物語:ハーパー・リー』子供と世界 世界と子供

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これは名作でした。

『アラバマ物語』

アメリカの作家であるハーパー・リーさんによる長編小説です。

原題は『To Kill a Mockingbird』で、1960年に出版されました。



1961年度にはピューリッツァー賞を受賞していて、1962年には映画版も制作されています。

アメリカ南部における人種差別問題を扱っている作品で、世界的にベストセラーとなっている作品です。

内容紹介

1961年度ピュリッツア賞にかがやいた本作は、映画化されて、1962年度のアカデミー賞で、作品賞を含む8部門にノミネートされ、主演男優賞(グレゴリー・ペック)、脚色賞(ホートン・フート)、美術賞を受賞しました。日本語訳は1964年に刊行、以来絶えることなく読みつがれています。

舞台は1930年代のアメリカ南部アラバマ州。人種差別の色濃い町で、母を早くに亡くし、弁護士の父と暮らす兄妹。

その町で黒人の若者が、婦女暴行の無実の罪をかぶせられます。父は彼の弁護を引き受け、閉鎖的な町にあふれる人種差別や偏見のなか、陪審員が白人だけの法廷で、正義の戦いを挑んでいきます。

二人は、法廷に立つ父の姿を目にしたり、町で起こる多くのことを経験して、成長していきます。

信念を貫く父の姿は、正義と勇気の象徴として、アメリカ国内だけでなく、世界中の人びとの心に刻まれています。

この美しい小説を、世のすべての親たちに捧げます。

https://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1006.html

根深い問題を扱った

『アラバマ物語』を読みました。

これは映画化もされている作品で、映画もセットで観ました。



これは原題『To Kill a Mockingbird』という非常にセンスある感じのおしゃれなものでありながら、アメリカに根付くとても深い問題を扱っている作品です。

それは『人種差別』という問題です。



それは、アメリカ社会に根付いている深い問題とつながってて、映画『グリーンブック』でも扱われていた問題です。



物語の大筋となっているのは黒人の若者による婦女暴行事件です。

父親のアティカスは弁護士であり、容疑のかかる黒人の弁護をすることとなります。

アティカスにはスカウトとジェムという二人の子供がいて、物語はこの子供達の視線で語られます。

差別への気づき

この作品が名作と言われる理由の一つとして、これは『子供たちが、差別が存在する』ということを知る瞬間を描き出しているからだと思います。

それはおそらく子供である主人公たちが、広大で複雑で、残酷な大人の世界に初めて触れる瞬間でもあり、

その瞬間をかつてないほどに美しく描き出しています。



誰しもが子供時代を経て大人になっていきます。

子供は狭い世界に生きていて、狭い世界に生きているが故に保護されてもいます。



しかし、いずれ必ずその世界を飛び出し、外の世界へと踏み出さなければならない時が訪れます。

その過程は世界中のどこであろうとも共通している成長の過程であるとも言えます。

自分の持っている知識や経験、想像力をはるかに凌駕するような外の世界と対峙しなければならない時がくるのです。



この物語では『人種差別』という問題が存在しているのだということを子供達が理解する場面がはっきりと描かれています。

それは世界の残酷さでもあり、当時のアメリカ南部では誰もが否定することのできない現実でもありました。

そして子供たちと父親は自分たちの無力さを思い知ることとなるのです。

世界の複雑さを知る

『子供達が世界の複雑さを理解する瞬間』

きっとそれは人生における誰もが経験することでありながら、その瞬間には、もっと言えば事後的にも自覚することの難しい瞬間かもしれません。



刹那的でありながらも、確実に次の世界への扉を開き始めるような。そんな瞬間。

自分はいつだったのだろうか・・・と。



この物語は最後少しだけ救いを与えてくれるような形で幕を閉じます。

そして複雑である世界を少しだけ肯定することができるようにもなっていたりもします。



そんな小説です。

ぜひ一度読んでみてください。

そして原題である『TO KILL THE MOCKINGBIRD』の意味も考えてみて下さい。

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